たぬき再び

「邂逅」

地響き。振動。
横なぐりの衝撃。

こんな始まりでした。


 

「夏子ちゃん、さっき

 『今、女の人募集してますか?』

 って電話があったんだけどーどうも、たぬきの声に似てるんだよね。

 『以前うちに来たことありますか?』って聞いたら

 『ありません』って言うんだよね。

 とりあえず会わなきゃ話にならないから、

 これから来るんだけどたぬきなのかな?まさかねぇ

「だってあんなにママが怒って怒鳴りつけたじゃないですか。

 普通じゃ来られないと思うけど」

「そうだよね・・・」

そして、10分後。

 

「こんばんわー」

「あーっ!やっぱりたぬきさん!」

「こんばんわ。お久しぶりです」

「なんだ、たぬきさんだったら電話の時言ってくれればよかったのに」

「すみません。言いにくくて・・・

  ママ、もう一度ここで働かせて貰えませんやろか?」

「うーん。困ったねぇ。あなたは必ず飲み過ぎて仕事にならないから」

「いいえ、もうそんなことはないんよー。

  心を入れ替えたんや。今は真面目になりましたからお願いします」

(ママ、まさか・・・お願い、やめて!)

「やっぱりだめよ。たぬきさんがいては商売にならないもの」

(よっしゃー!)

 

たぬきはクビになってからまだたった2ヶ月。

それなのに再度使ってくれと言うこの図々しさ。

(円満退社ならまだしもねぇ)

今の時代、このくらい強くないと生きていけないのかな。