おさる 〜我が人生に悔いはあったか?〜

第9話

ホントお寒い話が続きます。
せめて、明るく振る舞いましょうか。


不景気の風・・・

 

それは1998年も残すところひと月という頃・・・・

こんなに酔っぱらって店に入ってきたのを見たのは初めてだった。

すでに目がすわっていらっしゃる。

「なつこさ〜ん。うちの会社、もうだめになっちゃったよ〜。

 社長がね、(といってもおさるの実兄だが)

 今年いっぱいで会社をしめるんだってさ」

いつになくあれている雰囲気はそのせいだ。

世間は不景気だが、おさるの身にも冷たい風が・・・

どうも、社長の息子(おさるの甥にあたる)

跡を継ぎたがらないらしいのだ。

無理に借金をしてまで会社を継続させるなんて嫌だと言ってるらしい。

「それじゃ、他の従業員はどうなるんですか!?」

「俺は(社長)もう年だから隠居した方が良いと思うんだが、

 息子は後を継いでやるのはいやだと言ってる。

 これはもうやめるしかないだろう」

おさるはただの従業員とはいえ社長の弟だ。

みんなの気持ちを代表してはっきりと言ったそうだ。

「そんな突然やめると言われても、みんな生活かかっているんだ!

 なんとか、がんばって続けて欲しい」

だが、返ってきたのは素っ気ない返事。

「会社は今年一杯でやめる」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

 

「あんなやつ!もう、兄でも弟でもない!縁を切ってやる」

とまぁ、その怒りはお酒を飲んでも(飲んでるから?)

なかなかおさまらなかったが、そんな中でも、

「次の仕事なにしようかなぁ・・・、はぁ〜」

と寂しげでもあったのだ。

がんばれ!おさる!

君には妻も子もいないのだ!

何をしようと自由なんだぞー!

しかしなんだね。
自分が隠居するなら弟に会社を譲る気にならないかねぇ?
やめるんならあげたっていいじゃんねー。
もっとも、やる気があればお客さんを引き継いで自分で商売始めるか。