九官鳥
第3話

♪にーげーたー、女房にゃ♪未練はないけど
貸した金には未練があります。


夜逃げや本舗

 

「ヘルメットに集金バック」といういでたちの九官鳥は、

新聞専売所の仕事をしている。(M新聞)

店の新聞もそこから配達してもらっていた。

飲み屋で新聞配達の人が、

「お仕事はなーに?」と女の子に聞かれて、

マスコミ関係の仕事なんだ・・・」

と、答えるのは定番です。

そして、「うわー!新聞記者かなにかやっていらっしゃるんですか?」

と、答えるのも、この世界ではお決まりのリアクション

やっぱり、ついカッコつけたくなっちゃうんでしょうねぇ(笑)。

この人は、最初から「その先のM新聞で働いてるんだ」と言っていたから、

ある意味、正直者だと思っていたんですけどねぇ。

 

何回も来てくれるうちに「つけ」で飲むようになった。

基本的には「現金払い」がこの世界での基本なんだけど、

それなりのおつき合いが出来れば、そこはお互いの信用ですから・・・。

はじめのうちは給料日の直前で、金額も少なかった。

だんだん回数が増えていったが、給料になるときちんと払ってくれた。

ところがある時、ぱったり来なくなってしまったのだ。

仕事が忙しいのか、けがでもしたのかと心配していた矢先、

(未払いの分があるからねー。そっちの方が心配でしょ)

こいつが4軒先の居酒屋のマスターに、

「俺は、絶対に逃げてやる

 誰にも見つからないところに逃げてやるんだ」

と言っていたという噂を聞いた。

ママが早速、勤め先の販売所に電話すると、

「その人は急にいなくなってしまって

 うちのほうとしても困っているんです。

 おまけに、集金のお金を持ち逃げされたのです。

 今、全力を挙げて探している状態でして・・・・

 居場所が分かりましたら必ずご連絡しますので」

と、言われたとか。

二・三日たっても連絡がないのでもう一度電話すると、

「探してるが見つからない」の一点張り。

誠意の見えない態度に怒ったママは、新聞社の本社(M新聞)に電話した。

さすがに本社の対応は迅速で、逃げていた「九官鳥」はしばらくして見つかった。

なんでも、

「新聞屋の仕事をしていた人間は、

 よその土地に行っても同じ仕事をする」

のだそうで・・・

(それしか仕事が出来ないって事かな?)

 

たまっていたつけも払ってもらった。

まぁ、時間はかかったが、一件落着!

ちゃんちゃん。

悪いことはできないねぇ。

(今でも日本のどこかで「×××こ」を連発しているんでしょうか?(笑))