旭ちゃん
第1話

あだ名の付け方も色々で・・・
でも本人には知らせない。


しまりす

 

歌う声が 小林 旭 に似ているという

それだけの理由でこんな名前をつけてみた。

店では、当然本名で呼んでいるのだが。

 

40歳。独身。両親と同居。

小柄で五分刈り、なぜか胸毛有り。

人の話はほとんど聞かず自分の言いたいことしか話さないので

なかなか会話が成り立たない。

「この間よー、社長のヤツ頭に来たんで

 扇風機をぶっとばしてやったんだ。

 そしたら、こわれちゃってさー、知らん顔したんだ」

(おっ、強気ですね)

「その日の午後になって社長が(扇風機を壊したのは)誰だ!

 って言いやがってよー。

 おれ、だまっててやったんだ。おかしくってよー」

「ええーっ!それってまずいんじゃないですか?」

「ぶっとばしたらよ、せ、扇風機がこわれちゃったんだ」

(それはさっき聞いたよ)

ばっちぐーだぜぇー!!!うぉりゃーーー!!!」

(な、なにがおこったの?旭ちゃん?大丈夫かな)

「その扇風機は修理できたんですか?」

「社長がよ、あんまりむかつくことしやがったんで

 扇風機をぶっとばしたんだ

(だから、それはもう聞いたって)

「うひゃひゃひゃっ!笑っちゃうよなー」

「ばっちぐーだぜぇー!!!」

(あ、完全に自分の世界にはいってる。

 しかも、両手の親指立ててるし。今時ばっちぐー?)

こうなるとただひたすら

旭ちゃんの話を聞くことに専念しなくてはならない。